日本CMO協会 8年の歩み
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発起人メッセージ日本CMO協会の黎明期と今後への期待 私は医薬品開発を中心に歩んできましたが、臨床開発の場面で結晶多形の問題で苦しむこともあったため、早くから製剤やCMC、生産やサプライチェーンの大切さを痛感していました。2000年代は製薬会社が盛んに工場を譲渡・売却し始めた時期であり、日本の医薬品産業が、台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service)によってすべて生産拠点を奪われた半導体産業のようになってはいけないという強い思いがありました。そこで、2005年の薬事法改正でCMOが認められたことをきっかけに、日本にモノづくりを残したいという強い志をもって、同業各社が集まり、当局とも一緒になって産業育成するための協会作りについて、西村さんと塩野義製薬の前田さんらと勉強会を作ったのが、日本CMO協会の原点となりました。 日本CMO協会も設立8年目を迎えて活発な活動を展開されていることと思います。今後のCMOはCDMOに進化して、ただモノを作ることから、製剤技術、テクノロジーだけでなくサイエンスに深く関わっていく必要があると思っています。医療は低分子から高分子へ、抗体・再生医療や細胞治療等へと発展する中、これらをCDMOで扱えるようにならなければなりません。そのためには、匠の世界を超えて、医学はもちろんデジタル化を含めた最先端のサイエンスを取り入れてエコシステムとして作り上げる発想と技術が重要になると見ています。また、世界一高齢化が進む日本では、薬剤の吸収・分布・代謝・排泄といった体内動態に改めて着目することも必要ではないかと思います。 日本CMO協会が世界の製剤技術をリードする役割を果たすことを期待いたします。シミックホールディングス株式会社 代表取締役CEO中村 和男日本CMO協会8周年に寄せて シミック社CEO中村様から「製剤技術が日本から無くなるのでは」と将来を危惧するお言葉をお聞きし、同じ思いを抱いていた者として大いに共感し、協会設立に諸手を上げて賛同させて頂きました。設立8周年を迎えられるとのこと、会員会社の皆様のこれまで長きにわたり払われた御努力に心から敬意を表する次第です。 昨今、技術とは何かを改めて考えさせられる技術の劣化に関わる事件が、連日のように報道されております。そして、その範囲は戦後の日本を作り上げるのに貢献してきた自動車、鉄鋼を始めとして、あらゆる分野に及んでおります。製薬関連企業も決して例外ではありませんでした。技術喪失が斯様に私達世代の生存している間に表面化するとは、凡庸な身には思いもよりませんでした。検査不良で話題になっている自動車会社が外資と提携する寸前のことでしたが、当時のトップがISOの講習会で「自動車会社にはISOなんか必要がない。何万点もある部品を全く狂いなく日々問題なしに多くの車を組み立てているのだから。しかし、時代の要請に従い外国の基準云々」と言われていたことを鮮明に思い出しております。 昨今の事例は、技術とは単に「物事を巧みに行うわざ。技巧。技芸。」(広辞苑 第5版)ばかりではなく、「関与する人の驕ることのない、愚直な熱意が積み上げた結果」であることを強く示唆しているようです。 会員会社の皆様の益々のご研鑽と、その結果としてのご発展をお祈りしております。元 塩野義製薬株式会社 代表取締役副社長前田 孝3

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